Hahnah Chronicle

ドラマ「ノーマル・ピープル」(NORMAL PEOPLE) が面白かった

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原井 夏樹
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親密な関係性が崩れ去り、再形成され、保たれ、また崩れ去り、その繰り返しが起こる様を、自分の人生に重ねて観ていた。

なぜこのドラマを観ようと思ったか

自分には壊してしまった人間関係があり、後悔している。
壊れた人間関係の一方で、自分には何かしらの別の人間関係が必要だった。孤独になることを恐れていた。
勇気を出して行動し、疎遠になった人たちと再び親しい関係になった。

そんな経験から、このドラマ描かれている人間関係の変遷・崩壊・修復の物語に興味をもった。
このドラマを通して自分の過去を振り返り、反省に、糧になるかもしれないと思った。

これが非常に面白く、一気に観終わってしまった。
自分の心に刺さったので感想を書き留めておく。

主人公たちの高校生時代

主人公のコナルとマリアンは、高校生時代に出会う。
コネルはクラスの人気者の男の子。一方マリアンはクラスの嫌われ者の女の子で、よくいじられたり嫌がらせをされたりする。
マリアンは自分の頭脳と成績に絶対の自身を持っていて、いじられてもそれを気にせずにいられる。先生や他の生徒に皮肉を言ったり反抗的な態度をとったりする。孤独には慣れっこだ。
コネルもマリアンと同じくらい頭が良く、成績優秀。さらにスポーツでも学校のエースで、それでいて謙虚で奢らない性格だ。

コネルの母親がマリアンの家で家政婦をしていることから、コネルはよくマリアンの家を訪れる。学校外で2人は親交を深め、恋人関係になる。
唯一コネルだけがマリアンに優しく、しかし学校内ではそれは隠していて、マリアンがいじられていてもコネルは傍観する。
コネルは自分の立場が危うくなることを恐れているように思える。また、マリアンと親密なことは絶対に秘密だと思っている。

舞台はアイルランド、高校には卒業パーティというものがある。男子が女子を誘い、ペアになって踊り、卒業生みんなで最後のパーティを楽しむのだ。
コネルは、マリアンではなく、周りの人間関係の調和を取るために別の女の子を誘った。
コネルはマリアンの部屋でそのことを彼女に伝える。彼女が傷つくとは思っていなかったようだ。
彼女はその場でコネルを追い出し、2人の破局となった。
コネルは卒業パーティに行ったものの、すぐに抜け出し、マリアンに謝罪のメールと留守番電話を残すが、もう手遅れだ。
(孤独なマリアンは、コネルに誘われなければパーティに行くことはできなかった)

ここまでが高校生時代のあらすじだ。

コネルはマリアンを誘わなかったことを、母親(2人の関係性を察しており、またマリアンの内面を良く理解している)からひどく叱られていた。
とてもよくできた好青年なのだが、この時ばかりは「見損なった」と母親に言われてしまう。

のちに明言されるのだが、このことはマリアンにとっては耐え難い屈辱だったそう。
恋人である自分ではなく、別の女の子を誘ったことが、彼女にとっては許せないことだった。

そして、マリアンはとても繊細な感性の持ち主でもある。コネルはそれを聞いても理解できていなかった。
マリアンは、自分を変わり者だと思っている。冷淡で無感情のように周囲からは思われているが、実際にはそうではない。繊細なのだ。
マリアンのその変わったところ(人よりも繊細なところ)が作用して、彼女ににモヤモヤした感情や悲しみ・苦痛を感じさせることがある。そうした時にマリアンは自分の感情を表現することができず、人とのすれ違いを起こしているように見える。

一方、コネルとマリアンの関係は学校のみんなには秘密だったから、その秘密を押し通すのが当たり前というのがコネルの頭にあったのだろう。 コネルは決して学校でマリアンに愛情表現をしなかったし、それどころか関わろうとしなかった。
それもマリアンにとっては、苦痛なことだった。
コネルが学校内での人気者という自分の地位を守ることを優先しているのだと、推察できてしまう。そしてコネルがパーティに誘った相手は、コネルに好意を持つ学年のマドンナでもあった。
マリアンが疑心に駆られたり、嫉妬するのも無理はない。屈辱を感じるのも仕方ない。

コネルもマリアンも(特にコネルの方が比較的)、自分の考えや思いを伝えることができていない。
2人がいつかすれ違い、関係性が壊れるのは決まっていたようなものだ。
過去の自分に重なる部分があるなあと、共感できてしまう。

大学時代1 - 再開

コネルとマリアンは同じ大学に進学する。
恋人関係だった高校生時代に、2人は同じ大学に進もうと話して決めていた。2人とも学力は高く、同じ名門大学に進学。
コネルは英文科でマリアンは歴史政治科。しかし2人に関わりは全くなく、連絡もとっていない。

新しい環境にコネルはあまり馴染めず、親しい友人もできず、ただ勉強とバイトをする日々を過ごしていた。シェアハウスに住んでいてルームメイトもいるが、コネルは彼らと親しくなろうとはせず、最低限の挨拶だけしかしない。
これは、コネルの性格によるところが大きいと思う。コネルは本来内気な性格で、人気者だった高校時代でも自分から積極的にコミュニケーションを取るわけではなかった。しかし向こうから話しかけられれば友好的にできるタイプだ。
それに加えて、マリアンとの関係がなくなった状態で、マリアンが勧めてくれた大学・学部に通うことに虚無感も感じていたのだろう。それならば学生生活を充実させようという意欲も湧かないことは想像できる。

しかしそんな中、同じ授業を受けていた男子学生に誘われ、彼が主催するパーティに参加することになる。
コネルはその男子学生から色々な人を紹介されるが、彼の恋人として紹介されたのが、なんとマリアンだった。
彼女は大学ではすっかり垢抜けて美しくなり、友人も多く人気者になっていた。同じく人気者のその男性と付き合っている。

同じ大学だから再開するのだろうと、自分はもちろん予想していたが、コネルにとってはショッキングな再開だろう。自分もなんだかショックだった。
そして、高校時代と大学時代で、人気者、孤独者、という立場が逆転しているのも面白い。

再開した夜、マリアンはなんだか眠れずコネルに連絡を取る。
マリアンは「再開できて良かった」「あなたと過ごした頃が懐かしい」とコネルに伝える。複雑な気持ちを抱き、言葉を選びながら。
マリアンが「また友達でいたい」と申し出て、コネルはマリアンの友人グループと一緒に過ごすようになる。 この申し出をするのは勇気が必要だった思う。それか自身がついてなんでも行動に移せるか、だ。

自分も疎遠になった人に「また親しくしたい」と話したり、まだ親しくない人に「これから親しくなりたい」と申し出たりしたが、勇気が必要だった。
自分の場合、マリアンとコネルの状況とは全く異なるが、相手に拒絶される勇気が必要なんだと思っている。
この言葉はある人の受け売りだが、「拒絶されても傷つくのは自分だけ。相手は何も傷つかない。それならそれでいいと思って行動に移す」。
人間関係を築くのが苦手な自分は、この言葉に後押しされる。

大学時代2 - 和解、再び恋人関係に

コネルとマリアンは2人で話している。

「高校時代の俺たちについて、みんなは知っているのか?」とコネルが尋ねる。
マリアンは今と違い、高校時代は孤独で、いじめられていて、友人もコネル以外におらず、コネルとは恋人関係だった。
マリアンはそのことをみんなに話していない。

「(恋人だったことを)バラしたら恥ずかしい?」とコネルが聞くが、マリアンは「ええ」と答える。
なぜか?「ある意味屈辱的だったから」何がかというと「コネルにされたことが」「それと、耐えていたことも」。 (自分が思うに、マリアンは学校でのコネルからの扱いが苦しくて「耐えていた」と表現したのだろう。コネルはマリアンに挨拶すらしない。マリアンと交流することがまるで悪いことであるかのようで、そのことに耐えていたのだと思う。)

今度はマリアンが質問する。「高校の卒業パーティに私を誘おうと思った?」
コネルの答えは「思わなかった。後悔している。行ってくれた?」 マリアンは「もちろん」と返事する。

2人は悲しみの涙を浮かべている。

コネルは自分だけが知っていた当時のこと、当時の思いを、マリアンに伝える。
自分たちの秘密の関係を実は高校のみんなは知っていたのだと。そしてみんなは、それを知っていて冷やかすこともせず、全然気にしていなかった。
当時のコネルは「バレたらやばい」と思っていたが、実際はそんなことはなかった。気にするわけがないのに、すごく不安に感じていて、マリアンにひどいことをしてしまった。
今もマリアンへの罪の意識が頭から離れない。本当に申し訳ない。と。

それを聞いたマリアンは彼を許した。

このシーンを見て、コネルはようやく、マリアンに当時の自分の思いや後悔を伝えることができたんだな。と、まず思った。
コネルはとにかく伝え足りていない人間だったからだ。
またマリアンも、屈辱的だった、耐えていた、ということを初めてコネルに伝えることができた。

2人とも、心の内、頭の内を適切に共有していなさ過ぎると思う。きちんと共有すれば、お互いに相手のことを理解し、許し合えるのに。
これは自分の考えだが、お互いのことを全て知っていれば、何も許せないことなど存在しないと思っている。
例えどんなにひどいことがあっても、なぜそれをしたのか、そうなってしまったのか、その時どんな体調で心理状態で、何を考えていたのか。それを知れれば、相手の立場に立って考え、理解し、許せると思っている。
でも現実のシーンではそれが訪れることはなかったりする。コネルとマリアンの高校時代のように、傷ついて、感情的になって、その場をとにかく終わらせようとするからだ。
また、コネルとマリアンのように、自分の思い、考え、状況を伝えられていなかったりする。
相手の特性に合わせて何をどう伝えるか、何をすべきで何をすべきでないか、というのも重要だ。
マリアンは繊細な感性を持っているので、それを理解して接する必要があるが、コネルはまだよく分かっていなかった(それでも彼女の一番の理解者ではあったが)。

偉そうに言っているが、自分もできていない。だから人間関係が壊れる。
でも、後からであっても、伝えることで許してもらえるかもしれない。このシーンを見てそう思った。
自分の壊れてしまった人間関係はもう修復できないかもしれないが、最大限の努力はしよう。

他にはタイミングというものもあると思う。
伝えたとして、相手はそれを受け止められる状況なのかどうか、だ。そういう観点で言うと、結局は時間が解決するのかもしれない。
マリアンも時間が経って気持ちの整理がついたからこそ、コネルの謝罪を受け止め許せたのかもしれない。

その翌朝、マリアンはボーイフレンドに別れたいと告げた。
マリアンは元々、彼との関係をそこまで望んでいなかったらしい。
コネルとの和解がきっかけで、自分の気持ちを整理できたのかもしれない。自分の心に空いていた穴を何かで満たす必要がなくなったのだろう。

その1時間後、コネルと外を歩きながら話している。
前提として、コネルは大学で恋人ができた。マリアンが紹介した友人の一人だったと思う。 しかしコネルはその恋人とひどい喧嘩をしているらしく、マリアンにそのことを問われた。
そしてマリアンはマリアンで、彼女の恋人とついさっき別れたことをコネルに告げる。

その後2人は一緒に、大学のみんなが参加するパーティへ向かう。
このパーティにコネルの恋人は来ていない。コネルと喧嘩しているからだろう。
そこでマリアンはコネルを誘惑するが、彼女はひどく酔っているのでコネルは本気にしない。
しかしいい感じの雰囲気になり、キスをするし、翌朝にはセックスもする。
こうして2人は再び恋人関係になる。

大学時代3 - 成長したこと、していないこと、そして別れ

コネルとマリアン、そしてもう1人の女性の3人で話しているところ、その女性から「あなたたち、やってるでしょ?」と聞かれる。
マリアンが「Yes」と答え、続けてコネルも肯定する。
その女性曰く、「あなたたちは人前で触れ合ったりしないけど、みんな噂している」とのこと。
マリアンは高校時代も秘密で交際していたことも明かした。
高校時代にはずっと秘密にしていたが、今では秘密にする必要はないという考えに変わっていることが分かる。この点で彼らは成長している。

場面が変わり、コネルとマリアンの友人グループでの話になる。
楽しげに会話する中で、ある友人男性がマリアンにボディタッチをする。以前からの彼の態度から、彼がマリアンに恋愛的な好意を持っていることは察することができる。
当然だがコネルはそれが気に入らなかった。マリアンと2人きりになったコネルは、このことに苦言を呈する。「いつも、君の体を舐めるように触る」と。
しかしマリアンは、「何それ、自分は触りもしないくせに」と不満を漏らす。「彼の癖だから気にしないで」とも。

高校時代からずっとそうだが、コネルは人前でマリアンに愛情表現をしない。ボディタッチもしたことがない。
しかしマリアンは、人前でも愛情表現をしてほしいと思っている。コネルは高校時代から変わっていなかった。高校時代のマリアンはそれに耐えていたが、今、それを明確に求めている。
マリアンはやっとそれを伝えることができた。きっかけはどうあれ、些細なモヤモヤを伝えられるようになった点はマリアンの成長だと思う。

日は変わり、コネルとマリアンは共通の友人のバースデーパーティに向かう。
そこで初めて、コネルは人前でマリアンにボディタッチをする。

求められてことをすぐに改善・実行できるコネルはとても誠実だと思う。
それまでが至らなくとも、それからは変わろうとしている。 マリアンもコネルも成長したなと感じさせられた。

コネルは決断を先送りにしている問題を抱えていた。 アルバイト先の店舗が改装するため2ヶ月間休業することになり、その間コネルにはバイトの収入がなくなる。
コネルは実家が貧しく、アルバイトで稼がなければその2ヶ月間の家賃が払えない。
ルームメイトからは、「マリアンの部屋に泊まらせてもらうよう頼めばいい」とアドバイスを受けていたが、ずっと実行せずにいた。 長い間(たぶん6習慣だったと思う)結論を先延ばしにした末、コネルはアルバイト収入を失う2ヶ月間のことについて漸くマリアンに話す。
「2ヶ月の間は家賃が払えないから、来週から実家に帰る」と。ちなみにその期間は大学は夏休みなので学業上は問題ない。
「だから他に付き合う相手がいれば...(遠慮せず付き合って)」とコネルは言った。マリアンはただ「そうね、ええ」と。
そして2人はまた破局した。

これにはコネルに大きく非があると思う。一方でマリアンにもある。
まず、マリアンに2ヶ月間の無収入について話さなかったこと。どんな手段で乗り切るにしても、もっと早くに話すべきだし、必ず心配してくれるであろうマリアンに相談するべきだった。マリアンは頼られなかったことを悲しく思っただろう。大きな問題について相談することは、信頼の表現でもあると自分は思う。
コネルとしては、マリアンに迷惑をかけたくなかったのだろうが、それならその考えを伝えるべきだ。「 困っていることがあるんだけど、君に迷惑をかけたくなくないから話さない。でもなんとかするよ。」とでも話したほうが幾分かマシなのではと自分は思う。
ちなみに、なぜ「だから他に付き合う相手がいれば...」と言ったのかは自分には理解できない。これでは別れ話に聞こえてしまうではないか。コネルにその意思はないのに。
あえて推測するならば、マリアンの「男は女性を束縛しようとする」という以前の発言から、マリアンを自由にさせるための気遣いだったのかもしれない。しかしたったの2ヶ月間会えないからといって、そんな考えに至るだろうか?
考えや心の内を伝えることが苦手な点が、コネルは高校時代からあまり成長していない。それが今回の破局に繋がったと言える。
自分自身にも思い当たる節はたくさんあって、偉そうには言えないのだが。
そしてマリアンの非についてだ。
マリアンはコネルの発言を受けて、自分が思ったことを一切伝えなかった。ただ「ええ」と返事をしただけだった。思ったことを伝えるべきだ。
そして、別れ話にも聞こえるコネルの曖昧な発言に対して、どういう意味か確認すべきだった。もし別れるにしても、なぜそうしたいのかを聞いても良いのではないか。
コネルとマリアンの会話から自分の過去の失敗を顧みて、しっかり伝えられるようになろうと思った。

大学時代4 - 半年越しの心境開示

コネルが実家に帰っている間、マリアンも父親の追悼ミサ(ずいぶん昔に亡くなっている)のために帰省しており、2人はスーパーマーケットで偶然再開する。
その後コネルの車でマリアンを家まで送りつつ会話し、お互いの交際相手について話し合う。
マリアンは、コネルと共通の友人グループの男性と付き合っていた。コネルはそのことを又聞きしていてその確認の会話をする。
コネルには交際相手はおらず、それをマリアンに伝える。
コネルはマリアンの父の追悼ミサに出席してもいいかと尋ねるが、マリアンは断る。
話しの終わりに、「もう友達でいたくないなら、はっきりそう言ってくれ」とコネルは言う。
しかしマリアンは「友達でいたい」と答える。

9月になって以降、コネルが大学の方へ戻ってからも2人は友人として時々会っていた。
ある時カフェで待ち合わせし、話す。マリアンの恋人の話になる。彼との交際がどんな感じか、彼はセックスの時にどんな感じかを話していた。
彼はセックスの時にサディスティックになるらしい。それを聞いてコネルは少しだけショックを受ける。しかしコネルはより詳細に聞こうとする。ベルトで叩かれたりしていると。そしてマリアンもサドな仕打ちを受けるセックスが好きだと言う。コネルは複雑な面持ちになる。
コネルと付き合っていた時とは違うのだと。ジェイミーとの関係は、なんだか演じているようにマリアンは感じるらしい。コネルと付き合っていた時は、コネルが望むなら何だってしたいと思っていた。俯きながらマリアンはそう言う。

このシーンを観て、マリアンは続けられるならコネルとの交際を続けていたかったと思っているように自分には伝わった。コネルにも伝わっているだろう。
しかし今の2人はそういう関係にない。マリアンは、コネルに振られたと思い込んでいることだろう。 今の関係は、マリアンとコネルの2人ともにとって、望んだ関係ではないのは明らかだ。あの時のすれ違いでこうなってしまったのだ。

ちなみに、サドな仕打ちを受けるような、マリアンのMな性癖は両親が影響していると自分は思う。マリアンの父親は生前、母親をよく殴っていたらしい。マリアンは殴られたことはない。殴り、殴られるのが、マリアンの知る男女関係の形の一つだったのだろう。それが彼女の性癖に影響を及ぼしているのではないかと思う。

2人の破局から半年以上が経ち、4月になる。
奨学金試験の合格者発表の場で、コネルもマリアンも名前を呼ばれる。これで彼らは、卒業まで授業料と家賃が免除される。苦学生だったコネルには非常に重要なことだ。

マリアンは彼女の家で、友人グループと奨学金試験合格のパーティをしていた。
突然コネルからマリアンへ電話がある。コネルを迎えに行き、一旦家に入れる。
コネルは顔面から大量の血を流していて、さらに酔っ払っている模様。
強盗から財布を渡すように迫られ、拒否したら殴られたとのこと。結局財布は渡すことになった。
そんな状況で、唯一マリアンの電話番号を覚えていたので助けを求めたというわけだ。
酔っているコネルは、マリアンとイチャイチャしようとするが、「下の階にカレがいるから」とマリアンは手を払う。

コネルはは友人グループ(マリアンと破局する前はコネルもこのグループの一員だった)と軽く話し、またマリアンと2人になる。
「なんであいつなんだ?君を好きな男はいっぱいいるのに」とコネルは言う。マリアンの現在の恋人が気に入らないらしい。
「愛しているのか?」と。酔っているのもあるのか、別れるように勧めているような具合だ。マリンは「私たちの間ではその話はしないわ」と言う。
コネルは「少し前から自分にも交際相手がいる」と言った。
ここででマリアンの様子が明らかに変わった。目が潤んで、それを隠すようにキッチンに向かって顔を見えなくする。マリアンはキッチンの上においた両手を強く握りしめる。
様子がおかしくなったことに気づいて、コネルも少し動揺する。
マリアンは振り向き、「なぜカレと別れろと言うの?」と問う。 コネルは「君の幸せを願って」と良うが、口が澱む。
マリアンは泣き出してしまう。「話したくない、帰ってくれ」コネルに言う。
しかしコネルは財布を追い剥ぎに盗られたので帰るためのお金がない。申し訳なさそうにお金をマリアンから貸してもらう。
お金を取りに行って場が少し落ち着いたところで、コネルは去年の夏(破局した時)の心情を明らかにする。
「本当は実家に帰りたくなかった」「君に泊めてくれることを望んでいた」「あの時俺たちに何が起こったのか...」と。
マリアンは「別れ話だと思った」「泊まりたいなんて言われてない」「聞いてれば泊めてたわ」と言う。首を抑えて苦しそうに。
それを聞いたコネルはこの状況に耐えられなくなったのか、はたまた自分の非に気づいて気まずかったのか、彼女の前を去って帰宅した。

まず「なぜカレと別れろと言うの?」と言うマリアンの心理として、おそらくコネルと寄りを戻したい気持ちがある。コネルが別れろと言うがコネルの側には新しい恋人がいる。このことから、コネルはマリアンと同じ気持ちではないと、マリアンは推察する。それがショックだったのではないだろうか。ついさっきコネルはマリアンとイチャイチャしようとしていたのにも関わらず、そんなのはあんまりだ。
また、このシーンでは半年前の2人のすれ違いについて初めて話しあい、半年の時を経て2人の中で腑に落ちた。しかしあまりの悲しみに、この場では完全には受け止めきれていない。 コネルはなぜ話す気になったのだろうか?酒にひどく酔っていること、追い剥ぎにあったことから、普段の思考回路と違っていたのもあるだろう。取り乱したマリアンの様子を見て、何か言わなければと思ったのかもあるかもしれない。

大学時代5 - マリアンがずっと言えなかった欠陥

さらに半年ほどの月日がたち、季節は再び夏。
コネルとナイル(コネルのルームメイトの男性)はいつの間にか親しくなったようで、2人で夏休みのヨーロッパ旅行に出かけている。
その最中、イタリアにあるマリアンの別荘に立ち寄り過ごさせてもらうことになっている。(マリアンの実家はお金持ちだ。) 別荘にはすでにマリアンと彼女の恋人と、家政婦が滞在しており、彼女らと合流する形になる。

コネルがマリアンを探して下の階に降りた時、マリアンと恋人が言い合いをしているところに出くわす。
コネルに気づいて彼らは中断し、軽い会話を交わし、コネルはWi-Fiパスワードを聞いてその場を去る。
コネルはプールサイドに出て、Wi-Fiでコネルの恋人と通話をする。

その後コネルはマリアンに料理の準備を手伝おうかと言い、2人は自転車に乗って食材や飲み物の買い出しに向かう。
この時の2人はとても楽しそうに過ごす。2人で並んで自転車を漕ぐ姿がとても無邪気だ。
買い出しから帰った時、マリアンの恋人に遭遇する。挨拶だけするが、彼の面持ちは神妙だ。

そして全員で食事をする。
コネルとナイルのヨーロッパ旅行の話しで盛り上がりそうなところを、マリアンの彼氏は何かと突っかかる。
「せっかくの夏をホテルのハシゴで過ごすのか?」「1日中絵画を見ていたのか?本当に?」「観光名所を抑える旅が本物の旅と言えるか?」と言った具合で、一言一言に皮肉を込めて返答する。
もともと彼はそんなところのある性格なのが描かれていたが、この時は輪をかけて酷い態度だった。
マリアンは耐えられなくなったのか、キッチンの方へ一瞬立ち寄り、頭を壁に押し付けて気分を落ち着かせる。ワインの瓶を持って戻るが、恋人はまだあの調子だ。
恋人はわざと飲み物をこぼしたり、アジアン人差別の発言をしたり、幼稚な振る舞いになっていく。今度はコネルがそれをユーモアと皮肉を込めて避難する。
雰囲気は最悪だ。マリアンは再びキッチンに避難する。恋人もキッチに向かった。するとキッチンの方からマリアンの悲鳴が聞こえる。
コネルが走って駆けつけると、2人が言い合いをしているようだった。殴り合いの喧嘩になりそうなところを、コネルがマリアンを引き離してその場を強制終了させる。
プールサイドでマリアンの気を落ち着かせる。「今夜はあなたの部屋で寝たい」とマリアンは言う。

夜ベッドに並ぶマリアンとコネル。マリアンはこれまでたまにしか話さなかった、自分の劣等感のようなものをコネルに話す。
「私は変」「愛されることができない」「生まれつきだと思う」と。 コネルは「家族も友人も、たくさんの人が君を好きだよ」と言うが、マリアンは「私の家族は違う」と言う。
マリアンは、兄からは「死ねばいい」と言われるほど嫌われていて、母は兄の肩を持つのが常だ。
兄から「誰からも愛される価値はない」と言われたそうだが、近くで聞いていた母は何も言ってくれなかったとのこと。
マリアンにはそのようにされる理由がわからず、すなわち「愛されなくて当然だから」という考えになってしまう。
コネルは初めて聞いた。付き合っていた頃は一度も話してくれなかった。高校時代も、大学時代も。
なぜか?マリアンは「欠陥人間だと思われたくなかった。あなたに嫌われそうで。」と説明する。
コネルは彼女の額にキスをし、嫌いになったりしないことを示す。

マリアンのような繊細な人は、自分のおかしなところ(自分のせいでなくとも)に思い悩んでいることは多いと思う。
別におかしくなくても、おかしいと思い込んでしまっていたりもする。
マリアンの場合は家族関係が原因というところまではほぼわかっているようなものだ。
ならば、それをなんとかするように努力すれば良いと思う。自分のおかしな点を直したいのであれば、だ。
想像がいきすぎているかもしれないが、マリアンの恋人の態度が、だんだんとマリアンの兄のそれに似てきていたのだろう。それでマリアンは今現在この問題に苦しんでいて、自分を受け入れてくれるかもしれないコネルに話すことにしたのではないか。 個人的には、「自分を愛してくれる人ならば、自分の欠陥ごと愛してくれる」と思っている。普通の親子ではそれが成り立つが、マリアンの場合はそうではない。これはとても辛いことだ。愛を知らずに育ったとも言える。
嫌われたくないが故に欠陥を隠すのもよくあることだろう。でも、いつかは話して受け止めてもらわなければ、その愛は本物ではないと思う。

--- 季節は冬になった。
あの夏のあとすぐなのだろうか、マリアンと恋人は別れたようだ。
一方コネルは当時の恋人と変わらず仲良くやっている。
マリアンはスウェーデンへの1年間の留学中だ。現地のパーティで知り合った男性と付き合うことになる。彼はカメラマンをしていて、名をルーカスと言う。
コネルはFacebookでマリアンと彼が仲良くしているのを知り、マリアンにメッセージを送る。マリアンの好みのタイプで良い人そうだし付き合うのに相応しい人だと思う。と。
しかし、マリアンと恋人が2人で外食している場面で、マリアンの様子が浮かない。マリアンの新しい恋人は人の機微に気づけるタイプだ。「別れたいの?」とマリアンに聞く。「そうかも」とマリアンは答える。
「どうしたら付き合い続けられる?」とルーカスが聞くと、マリアンは「"付き合う"とか興味ないの」と言う。
マリアンへ「君ことが大好きだよ」と伝えるも、マリアンは「それが嫌」と言う。「私が求めているのはその逆のもの」。 それから、マリアンの要望通りに、恋人はマリアンにサディスティックな仕打ちをするようになる。そんなタイプの人ではないがマリアンのためだ。
セックスや写真撮影の時に彼女を叩いたり、腕を拘束したり、彼女が「シャワーを浴びたい」と言っても「ダメだ、動くな」といい、彼女に罵倒を浴びせる。マリアンが望んだことだ。
マリアンとルーカスは恋仲というわけではなくなるが、一緒に過ごしたり、性的関係を持ったり、撮影として彼女を撮ったり、という風に過ごすようになる。

マリアンはコネルへメッセージを送り近況を知らせる。
「自分が自分でないような感じがする。いい意味で。」「人生の外側を生きているような気分」「麻痺した感覚が心地いい」「世界が遠い感じ」と言う。 コネルはマリアンのそのメッセージに返信する。
「そっちの生活が幸せとは思えない」「世界が遠い感覚は僕にもわかる」「休暇(クリスマスシーズン)に帰国しないと寂しい」

しかしマリアンは帰国しない。母親との電話で、クリスマス当日でさえもスウェーデンに残ると言う。母親は帰国して欲しそうにしているが、マリアンはそうしない。
彼女は家族や実家にいい思いを持っていない。

この一連のシーンについて正直に言うと、自分はマリアンの心境を理解できている自信がない。 マリアンはなぜ今の恋人と別れようと思ったのだろうか? 推測になるのだが、マリアンは今自分に必要なのが恋愛関係ではないと思ったのだろう。スウェーデンで孤独を感じていたのも影響しているかもしれない。半年前にコネルに打ち明けた「愛されることができない」という欠陥(と少なくとも彼女は思っている)について考える時間が長かったのかも知れない。
マリアンは自分自信が感じる「人生の外側」から戻るために、家族にされていたようにな暴言やネグレクトを自ら求めるようになっていたのではないだろうか?そうすることで昔の感覚が取り戻せると。
だとするとそれは、おそらく前の恋人の時から少しずつ始まっていたのではないか? それとも、ちょっとした抑鬱状態なのかもしれない。抑鬱状態を一時的に和らげるような、彼女にとっての頓服薬が"粗末に扱われること"だったのかも知れない。そうすることで何らかの脳内物質が出るとか。

一方で、「自分が自分でないような感じがする。いい意味で。」と言っていることから、彼女はこれをいいことのように感じているらしい。そこが理解できない。
自分も留学した時に、自分を知る人がおらず他人の自分像に縛られずに生きていけることから、「自分が自分でないような感じがする。いい意味で。」と感じたことはある。
でもマリアンのそれは、自分のとは違う気がする。

コネルが「世界が遠い感覚は僕にもわかる」と言っているのはなんだろう?これもわからない。
コネルは高校時代から、自分のことでさえ他人のように客観視している節がある。そういうことなら納得なのだが。
もしくは、マリアンがいない世界のことをそう言っているのか?その対で、マリアンもコネルがいない世界をそう言っているのか?それはちょっとロマンスに考えすぎな気もするが、どうなのだろうか。

マリアンは帰国せず、ルーカスと過ごす。そして今、ルーカスの撮影を受けている。
彼に手首を縛られ、上半身が裸で、乱暴な言葉でポーズや表情を指示される。
マリアンはコネルのメッセージを思い浮かべている。「君はいい人だ」「あの夜は酷いことしてごめん」「誰に酷い事をされても君のせいじゃない」「たくさんの人が君のことが好きで、心配しているよ」
マリアンはルーカスの罵倒混じりの指示を拒絶する。それはお約束の演技ではなく、本当の拒絶だった。
それでルーカスとの関係も終わりになった。
マリアンは外に出て、美しい空を見上げる。何かが吹っ切れたかのように。

高校時代に、マリアンは家族から酷い扱いを受けてきた。クラスメイトからもそうだったが、マリアンにとっては家族のことが心に根深い傷を残している。 「誰に酷い事をされても君のせいじゃない」コネルのこの言葉が、マリアンを呪縛から解き放ったのかも知れない。「自分は愛されれることができない」というのが "自分の欠陥" ではないと思えるようになったのかも知れない。

大学時代7 - 友人の自殺、コネルの鬱・不眠、孤独感

年始、コネルに悲報が入る。高校の友人が自殺した。
彼は学力が低かったので高校卒業後地元で就職し、仕事に面白みを感じられずにいたが、明るくていい意味でバカな性格だった。 自殺をきっかけにコネルは精神状態が悪化し、不眠になる。
そんな状態が2ヶ月続き、ナイル(コネルのルームメイト)の勧めで、学生向けの無料カウンセリングに通うことにした。 コネルは「もっと連絡していれば」と後悔している。 カウンセラーが言う。 「彼の行動はあなたのせいではありません、あなたの責任ではない」「自殺で友人を失えば、何かできたはずなのにと考えるのは自然です、みんながそう考える」 コネルは、「みんなは彼のことを心配していた」と言う。コネルは彼と仲が良かったが、最近は疎遠だった。

大切な人や近しい人が取り返しのつかないことになった時、自分がどうにかできなかったのかと後悔するのは共感できる。
コネルは自分が彼を心配したり連絡をしなかったことを後悔している。そうしたら彼の悩みを聞いてあげられたかもしれないし、自殺に至らなかったかもしれない。
自分にも似た経験がある。ひどく後悔したし、今でもしている。特に自分の場合は、自分が最も結果を変えられる可能性の高い立ち位置にいたのに、事態の深刻さを分かっておらず何もしなかった。加えて、当時の自分は優しさを持ち合わせていなかった。自分を慕ってくれていたのに、自分がもっと優しい人間だったなら、他人を思いやれたなら、結果は違っていたかもしれない。
そんな自分が許せない。コネルの気持ちは痛いほど分かる。

年始の葬式のシーンに戻る。
コネルが恋人とともに式場を訪れると、マリアンもそこにいた。スウェーデンから帰国して参列しているようだ。
マリアンの元により、2人は抱擁を交わす。昔と違って、今はクラスメイトの前でも気にしない。
抱擁が長すぎたのか、恋人が腕を触って合図する。コネルの恋人は、前々からコネルがマリアンのことを気にかけ過ぎている点に不満を抱いている。

葬儀の後、コネルの実家でコネルと恋人は並んで寝るが、彼女は不満を漏らす。
恋人の自分を地元の友人に紹介しなかったからだ。
それとマリアンのことだ。マリアンはコネルに会えて嬉しそうにしていた。コネルは教会でずっとマリアンを見つめていたらしい。
それが変だと、恋人は涙目に訴える。

その後しばらくして鬱と不眠に悩み続けるコネルに対し、恋人は支えになることをやめた。
支えになりたいと思い努力したが、今の抑鬱状態のコネルには彼女の助けや言葉が届かなくなってしまっていた。
彼女もそれに耐えられなくなった。
そうして2人は別れた。

コネルがマリアンに愛情を抱いているのは視聴者なら分かる。そして、コネルの恋人が嫉妬するのはもっともなことだ。
そんな中でも、彼女はコネルを支えようとしていた。自分の持つ違和感や不満も伝えていた。彼女はコネルとの関係性を続ける上で、やれるだけのことはやったと思う。
しかし、コネルは抑鬱状態でベッドに横たわって、ろくに返事もしない状態だったりする。
コネルへ愛情が届かなくなってしまっていた。彼女の精神の方も参ってくる。誰も悪くない。

コネルはカウンセリングを受けている。
正直に話せる友人はいるか?と聞かれて、ナイルとマリアンの2人を挙げる。
マリアンは死んだ同級生のことも知っているので特に話しやすいが、スウェーデンに留学中だ。

夜、コネルはマリアンとビデオ通話する。多分カウンセラーの勧めだろう。
恋人と別れたとことを伝えた。コネルは別れたことに関して「何も感じない」と言うが、「急に泣き出してしまう」とも言う。
だからたぶん、恋人と幸せな時間を過ごしたのは本当だったのだろう。 コネルは「疲れた」と言い、マリアンはビデオ通話したままベッドで寝ることを提案する。
コネルはマリアンに見守られて安心感があったのか、すぐに眠ってしまう。
マリアンはパソコンの画面越しにコネルの顔を時々覗き込む。
コネルが朝起きると、画面の向こうには勉強しているマリアンの姿があった。「おはよう」と聞こえてくる。

再びカウンセリングを受けているシーン。
コネルは、カウセラーから、「自分の感情を話せますか?」と聞かれる。
実はこれは、コネルにとって核心をついた質問だ。これまでもコネルは自分の感情を話せていないシーンが多々あり、それが問題を引き起こしていた。
コネルは、「マリアンには話している」と答える。「彼女は自分と考え方が似ている」と。
そして、あまり気の合う友達ができなくて悩んでいることをコネルは打ち明ける。大学でだけそういうわけではなく、昔からそうだったと言う。
人気者だった高校時代でさえ、コネルは孤独を感じていた。
自殺した友人とも、友人ではあったが心が通じるような中でもなかった。でも同じグループの仲間だったから構わなかった。
高校時代にまわりがバカやっている中で、「18歳だからふざけるのは仕方ない」という風に考えるところがあり、自分が周りから浮いていると感じていた。
そして大学なら同じ価値観の人がいて、そんな人たちと仲良くなって、新しい人生が送れると思っていた。これを言いながらコネルは泣き出してしまう。 新しい人生が遅れると思っていたけれど、大学が大嫌いで、でも高校時代の人間関係にはもう戻れない。彼も死んだ。こんな風にコネルは嘆いた。

このシーンはコネルが昔から抱えている問題が初めて話されたシーンになる。マリアンでいうところの、「自分が欠陥に思える」問題だ。
別々のことだが、2人の奥底にある問題がやっと出揃った。
コネルの孤独はなんとなく共感できる。「自分のことを理解してくれる人などこの世にいない」と思っていたことが自分にもある。
自分がコネルの立場なら、マリアンとは絶対に関係性を続けたいと思い、そのための行動をするだろう。恋人関係じゃなくてもいい。出来るなら恋人・夫婦関係がもちろんいいが。
彼女だけが自分の理解者で、自分は彼女の理解者なのだ。価値観の合う人間が1人でもいるのなら、それだけで未来は明るいかもしれない。孤独じゃないかもしれない。
コネルは周りと価値観が合わず、自分の思ったことを話せないが、でもそういえば、マリアンに対しても話せていないことが多々あったではないか。
この時点のコネルは既に変わっているのかもしれない。マリアンとは唯の友人として長く付き合っているが、恋人だった頃よりも話せているだろうか。
自分も価値観の合う人とずっと付き合っていきたいものだ。切にそう願う。

大学時代8 - 繰り返す相互理解とすれ違い

8月になった。夏休み期間だ。
コネルが不眠になってから半年以上が経過している。彼はかなり回復しているようだが、まだ薬を飲んで治療を続けている。

マリアンはスウェーデン留学から帰国して、実家で過ごしている。
マリアンが庭のサマーベッドに寝そべって過ごしていると、兄がやってきて「哀れでどうしようもない女だ」と罵倒される。
いつものことだが、兄はこんな感じでマリアンに突っかかる。 コネルも帰郷しており、マリアンとコネルは海岸で話す。 兄の理不尽な態度についてマリアンは愚痴を言う。慣れっこでそこまで気にもしていない様子だが。

夜になり、マリアンとコネルは一緒にダンスパーティに行く。2人で踊っていたが、コネルが何故か何も言わずに急にいなくなる。頭を抑えていたから、具合が悪かったのだろうか。 マリアンはそのことが気になっていた。翌日の昼、コネルの部屋で2人は過ごしていたが、マリアンはコネルに何があったのか聞く。
コネルはただ、「タバコを吸いに外に」と答えるが、納得のいく答えではない。

話の流れで、"孤独"についての会話になる。
「前の恋人といた時、孤独を感じた?」とマリアンが聞く。
「時々」とコネルは答える。「自分らしさを失ってた」と意味深なことも言う。

マリアンが聞く。「昨夜私と踊ってた時、私何か嫌なことした?」 コネルは「どうして?」と答えたくなさそうな様子。
マリアンは「取り残されて手持ち無沙汰になったから。嫌なことしたかなって。」と。 コネルは「ごめん」と謝る。

話の流れを切って、コネルは「俺たちの関係、何かが違えばもっと単純だったかも」と言い出す。 マリアンは「何かって?」と聞くが、コネルは『わからないけど、単純な関係だったと思う」と言う。 マリアンは「大学1年生の時私と付き合っていて、孤独だった?」と聞く。
コネルは「いや、君は?」と。マリアンも「いや、孤独は感じなかった。一緒にいる時は」と。 コネルは「あの時が一番良かった。初めて幸せを感じた」と言う。 マリアンは「昨夜キスして欲しかった」と言う。 コネルは「俺もキスしたかったよ。互いに誤解したかかな」と。
コネルは、「そう言われて嬉しいのと同時に、過去の失敗が頭をよぎる」と言う。 「友情関係は何があっても失いたくない」のだそう。 マリアンも「言いたいことはわかる」と。 コネルは「君にはとても感謝している。鬱状態の時も支えてくれたしね。"延々と頼るつもりはないけど"」と言い、その時マリアンは目を少し抑えて、帰ると言い出す。

コネルの孤独についての詳細が、ようやくマリアンに共有されたシーンだ。マリアンは当然、コネル自身が最大の問題思っているそれを気にかけ、力になろうとするだろう。
実際コネルの言った通り、マリアンはコネルが最も孤独を感じていた抑鬱状態の時にスウェーデンから支えてくれていた。
しかしコネルの言った、"延々と頼るつもりはないけど"という言葉には、マリアンは傷ついただろう。
以前から彼女が言っているように、マリアンはコネルのためならなんだってしたいと思っており、彼から頼られたいのだ。
コネルのあの言葉でマリアンは悲しみと、拒絶されたような感情を味わったと思う。
マリアンは繊細な性格で、以前からその繊細さ故の感情を感じた時に、それを表現せずコネルとの仲を違えてきた。
今回もまた距離が離れてしまうのだろうか?

少し問答して、マリアンはやはり帰るとなった。
コネルはマリアンに手を差し出す。するとマリアンは手を取る。コネルがマリアンの手にキスをすると、彼女は「素敵」と恍惚の表情で言う。
コネルは、「不安で、君に帰ってほしくないのは明白だ」とはっきり自分の心情を伝える。
2人はキスをする。マリアンはコネルに「他の人とは違う」と言い、コネルは「君が一番好きだ」と言う。
2人はセックスする。いい雰囲気だが途中で、マリアンは「私はあなたのもの」「ぶって」と言う。マリアンの性癖だ。
コネルはそれを断る。「したくない。それでもいい?」と言う。2人は性行為を中断する。
コネルはマリアンに配慮しながらこう伝える。「ぶったりはできない、変に思えて。いや、"変"とは違う。いいことに思えない」
マリアンは「変?」と傷ついたようだ。
マリアンは繊細だ。自分が変であるということを突きつけられるとひどく傷つく。
彼女は泣きながら、歩いて帰る。
コネルも1人で泣いていた。

このシーンでは、2人が漸く結びついたかと思った。
2人とも思っていることを共有し、すれ違いを正そうとした。正直言って、2人の成長を感じたシーンだった。
それが実を結んだと思ったが、コネルがまだきちんと受け止められていないマリアンの一面があった。
コネルは言葉を間違えた。そのことにコネル自身も気づいている。
しかしこれは本当に難しいことだ。繊細な感性を持つ人間は多くはない。自分も持ってない側の人間だ。
自分も繊細な人を知っている。その人が傷つくことに重ねて、マリアンの心情を理解できる気がする。
本人から学んだり、本を読んで学んだりする。最悪の場合は間違いを犯し、関係性を修復しながら学ぶことになる(修復できるようなら)。
現実的に厳しいことを言うと、それは一生続くことかもしれないとも思う。その人との関係を続ける限り、だ。
でもコネルにはそれができると、自分は思う。
繊細な感性を持つ人の視点で見るとどうなのだろうか? コネルには厳しいのだろうか? それは自分にはわからない。

その後自宅に帰ったマリアンは兄に絡まれ、暴力を振るわれる。
マリアンの鼻から大量の血が流れている。
マリアンは詳細を伏せて、コネルに電話で助けを求める。
車で駆けつけたコネル。鼻が折れたかもしれないとマリアンは言っている。コネルは、これがマリアンの兄によるものだと察し、マリアンに確認をとる。
マリアンを先に車に向かわせ、マリアンの家で彼女の兄と会い対する。
コネルはの胸ぐらを掴んで脅した。「彼女を傷つけることを言ったら殺すぞ」と。コネルはかなりガタイが良い。マリアンの兄は引き下がった。 コネルとマリアンは車でどこかへ向かう(病院か、開いてなければコネルの自宅だろう)。

大学時代9 - 未来は決まっていない

コネルとマリアンは大学の方へ戻り、穏やかで幸せな日々を過ごしている。
ある日、コネルの元に一通のメールが届く。ニューヨークの大学院修士課程に合格した知らせだ。
コネルはマリアンに報告する。マリアンはまず「申し込んでたの?」と驚く。その後に「おめでとう。あなたなら当然よ」と。「ただ少しびっくりした」と首をさすりながら言う。 コネルは「恥ずかしくて黙ってた。身の程知らずと思われたくなくて。」と話さなかった理由を説明する。
申し込んだのは教授の勧めで、コネルはニューヨークでやっていける自信がないと言う。マリアンは素晴らしい機会だとニューヨークへ行くことを肯定的に伝える。
その場ではコネルは、「行かない」と断言した。

このシーンを観て自分がまず思ったのは、「またコネルは言わなかったな」ということだ。マリアンの気持ちは察するに余りある。
このドラマを長く観てきたからわかるが、顔や首の周辺をさすったり抑えたりするのはマリアンがストレスを感じている時のサインだ。 しかし、初めて、コネルは黙っていた理由を話した。いい振る舞いだ。そういった心の内を話したり、相手の違和感を払拭するようなことが信頼関係の維持には必要だと思う。
コネルはニューヨークへ「行かない」と断言したが、当然、マリアンとの関係性を維持したいという思いがあるのだろう。

コネルはマリアンを、コネルの家のクリスマスパーティに招待する。
地元へ戻り、2人はコネルの家族・親戚たちと共に本当に楽しい一時を過ごした。

マリアンの家では楽しいクリスマスパーティなどしたことがないだろうから、そんなものを経験できて心のスキマが埋まるような気持ちだったことだろう。

クリスマスパーティの翌日、マリアン、コネル、コネルの母の3人で街を歩いていると、マリアンの母親と遭遇する。
コネルの母が挨拶をする。マリアンの母親は、マリアンたちの方をジロッと見るが、何も言わず、会釈もなく無視して去る。
マリアンはコネルの母に尋ねる「母はどんな評判か」と。コネルの母は、「少し変わってると思われてる」と答える。

この時マリアンが何を思ったのか、自分には分からない。マリアンは"変"である(と本人は思っている)ことがコンプレックスなのだが、母親もまた変な人だったのだ。 そこに何かを感じたのだと思うが、何パターンも思い浮かんでそれらしいものが自分には分からない。
また、実はこれが、マリアンの家族の最後の登場シーンだ。マリアンは家族の問題を克服するのかと期待していたが、そうではなかった。家族から疎まれていることがマリアンの「変」「欠陥」というコンプレックスに繋がっていると自分は思っているのだが、その根本的な問題は解決されなかった。
それともマリアンの中では、ルーカスと別れて美しい空を見た時にこの問題は解決していたのだろうか。

コネルとマリアンは新年も地元で過ごす。
地元のバーでの新年会に参加し、高校の同級生たちと再会する。
コネルはもちろんだが、マリアンも、同級生たちとハグしたり仲良く話をする。
そして、その場でコネルはマリアンを抱きしめ、キスをする。この時マリアンは、高校時代にコネルと秘密でキスをした情景を思い浮かべる。

このシーンでは、マリアンが高校時代にコネルと別れた時に "耐えてきた" と表現された苦しみが昇華されたように感じた。
秘密の恋で、同級生の前では他人のように振る舞い、手も触れず、ハグやキスもできなかった。それにずっと耐えてきた高校時代だった。
しかし今初めて、彼らの前でマリアンとコネルは愛情表現をし合っている。
マリアンにとってこれがどれほど嬉しいことだろうか、と想像してしまう。

コネルの実家の部屋にて。コネルとマリアンが話している。
ニューヨークの大学の件についてだ。
マリアンは、ニューヨークに行ったコネルが素晴らしい経験を積むことを想像している。
コネルは、せっかくこれまでたくさんの困難を乗り越えてきたのだから、普通に生活したいと言う。
いろいろな困難と苦しみがあって、それを乗り越えたことにマリアンも同意する。
それは紛れもなく、彼女らの関係性が修復し、深まり、今に至るまでの過程のことだ。
しかしマリアンは絶好のチャンスだと、ニューヨーク行きを勧める。
するとコネルは、一緒にニューヨークに来ないかと提案するが、マリアンは「私はここにいたい」と言う。「私の人生はここ。やっと見つけた。続けたい。」と。 ニューヨーク行きは1年間だけのようだから、遠距離恋愛を続ければ良いという考えもあるだろう。 しかしマリアンは「約束はしない」と言う。「私たちの未来は決まっていない」と。 コネルは「君のおかげでここまで来た」と言う。 マリアンは「出会っていなければ私も違う人間だった」「これまでお互いに支え合ってきた」と。
コネルはニューヨークへ行くことに決めた。
マリアン留まる。
「心配ないわ」とマリアンは言う。 2人は涙を流している。

2人はまた離れ離れになってしまう。それを選んだ。正直自分は、離れ離れになってほしくなかった。せっかくこれまでの苦難を乗り越えて、絆を深めてきたのに。
マリアンは束縛しないされたくない性格だ。「私たちの未来は決まっていない」というのは、コネルを思いやり、かつ自分も苦しまないための選択だ。
しかし「心配ないわ」という言葉からも分かるように、マリアンはまたコネルと恋人に戻ることを信じている。これまで乗り越えてきたように、また一緒になれると信じている。 そんな深い愛の表現があるとは思わなかった。

終わりに

このドラマを通して、人が人と深い関係を長期的に築くことの難しさ、それを乗り越えるために必要なことを、コネルとマリアンの失敗と成長の繰り返しを通して学ぶことができた。
面白さも抜群だが、自分の苦手とする人間関係についての学びや再認識が多く有意義だった。
自分の経験と重ねて観れたこともあり、深く印象に残り、トップクラスにお気に入りの作品となった。

この記事がこんなに長い文章になるとは正直思っていなかった。
あまりにも印象深いシーンが多く、あまりにも多くの感想を持ち、あまりにも自分の心に響いたからこうなった。
それと、後々の自分が鮮明に思い出せるように書いているというのもある。

この記事を読んでくれている方は、おそらく NORMAL PEOPLE を既に観た方だろう。
視聴後の感傷に浸っていて、他者の感想も気になって読んでいるのだろう。
もし私と同じように感じたり、違うことを感じたり、私と違う見解を持っていたりして、それを共有してくれるなら、ぜひSNSでメッセージを送って欲しい。