Hahnah Chronicle

婚約者と別れた

Authors
原井 夏樹
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婚約者との別れについての振り返りと感謝の気持ちを綴ります。

婚約者との幸せな日々

婚約者と過ごす日々は人生で最も幸せな期間だった。

たくさんの共通の趣味で遊び、イベントに行って楽しみ、美味しいものを食べに行った。

離れていても毎日のように一緒に何かをして過ごした。

彼女こそが私の最高の理解者であり、私も彼女の最高の理解者であった。

お互いに色々なコンプレックスを抱えていたが、それも理解した上で受け入れ合い、支え合っていた。

私と彼女は、すでに人生をともに歩んでいるような感じがしていた。

今でも幸せだったあの頃に戻りたいと思う。

彼女が与えてくれたもの

彼女からは色々なものを与えてもらった。

開かれた趣味・趣向を獲得したのは彼女の影響だ。彼女、私がこれまで知らなかった世界を見せてくれた。
今までは1人で楽しむ趣味が多かったが、誰かと一緒に楽しむことの喜びを教えてくれた。

私はとてつもなく内向的だった。彼女のおかげで、人並みに外交的になれたと思う。

私は人を愛することができなかった。人と仲良くなるのにも時間がかかった。人と親密になることを避ける性質があった。いわゆる「回避型愛着障害」だった。
彼女は私の真逆のような人だった。彼女の太陽のような言動に照らされるうちに、また、彼女と相談するうちに、私は回避性愛着障害の原因となる過去の体験を見つけ出し、克服することができた。

私が不眠症に陥り、精神的にも不安定になっていた時期、彼女は支えてくれた。

楽しい時も苦しい時も、彼女はいつも私のそばにいてくれた。彼女の存在が、私にとってどれほど大きな支えだったか、今でも感謝している。

彼女にしてあげられたこと

私が彼女にしてあげられたことは、概ね彼女が私にしてくれたことと似ている。

趣味の世界に影響を与え合った。

彼女の内面的なコンプレックスを理解し、受け入れ、支え合った。

彼女が困難に直面した時や、精神的に鬱っぽくなってしまった時、私はできる限りのサポートをした。安心感を与え、解決に向かうよう導いた。

彼女のためなら、なんだってしてあげたいと思った。実際にそう行動してきた。

仲違い

あの出来事は突然のようで、実は少しずつ積み重なっていたのかもしれない。

ある日、注意深く伝えようと準備していた言葉が彼女を深く傷つけてしまった。それまでの関係の中で、積み重なったすれ違いや、お互いの内にあった小さな不満や不安が、その一瞬であふれ出たようだった。

注意深くと言っても、私はその前1ヶ月くらい前から鬱のような状態で、ネガティブに考えてしまう傾向にあった。その状態で1ヶ月間注意深く考えて、伝えたことだった。

精神状態が良くない時は、大事なことを実行したり決断してはいけないということは分かっていたが、私にはこの時、それを伝えないことで彼女と破局する未来が見えていた(ように思い込んでいただけかもしれないが)。ただ、伝えても破局する可能性があることも分かっていた。

その精神状態で、話すことを私は決意した。

そして、彼女から「話を聞きたくない」と言われたのに、無理矢理伝えたことも良くなかった。彼女もまた、私よりも長期にわたって精神状態が良くなかった。

彼女から距離を置かれるようになり、そこから二人の関係は大きく変わった。以前のように頻繁に連絡を取り合うことはなくなり、顔を合わせることもほぼなかった。彼女は心を閉ざし、私はただ、彼女の気持ちが戻ることを信じて待つ日々が始まった。

私は不安と後悔、罪悪感から過去最悪の不眠になった。一晩で一睡もできない。寝れても最大で2時間だった。それが2週間続き、限界を迎えて医者に通うようになり、今でも通院している。

互いに回復しようともがきながら、対話の糸口を探し続けた。私は謝罪し、できる限りの誠意を尽くして寄り添おうとした。しかし、彼女の心には深い傷と不安が残り、なかなか心を開いてはくれなかった。

この時期、私は「状況打破のために行動すること」と「信じて待つこと」の間で揺れ動いていた。焦らずに見守ることが最善なのだと自分に言い聞かせながらも、日に日に募る寂しさと不安に押しつぶされそうになった。それでも、希望を捨てきれなかった。

別れ

仲違いから1年が経とうとしている。関係修復のために1年も努力してきた。

私は、これ以上曖昧なままでいることが、彼女にとって良くないのではないかと考えるようになった。私の存在や言動、曖昧に残っている関係が、彼女の回復を妨げているのではないか、というのを可能性の一つとして考えていた。 もしそうなら、関係を終わらせることこそが、彼女の心を軽くする道なのではないかと考えていた。(もちろん、他の可能性についても熟考していた。)

そして今日、決意を持って、関係について話す機会を求めた。

しかし彼女は調子が良くなく、会うことはできなかったのでテキストでやりとりした。

彼女の反応をみて、前述の可能性が濃厚だと考えた。

彼女のためにも自分たちの関係を終わりにすることを提案した。

彼女の答えは明確だった。

「いまは自分のことで精一杯だし、トラウマが残りやすいタイプだから、一度 "怖い" って思ったらもう難しい。できればそっとしてほしい。終わりでお願い。」

半年前くらいに、メッセージを無視されたことに私は深く傷つき、それについて彼女を非難したことが一度あったのだが、彼女はそれがトラウマになってしまっていたらしい。

彼女は繊細な性格であり、かつ否定されずに育ってきた背景がある。精神的には鬱っぽくもあった。それを考えると、やってはいけない行動だったと、言った直後に謝罪したのだが、それでもトラウマを与えてしまって申し訳ない。

私から連絡が来るたびに彼女は追い詰められるような気持ちになり、もう関わることそのものが精神的な負担になってしまっていた。関係性の修復に向けて努力を続け、ポジティブさと思いやりを持って連絡をたまにしていたのだが、その私の言動や存在さえも、彼女にとっては回復の妨げとなっていたのだと思う。

私は、彼女のその意志を尊重し、「わかった」とだけ返した。

これで本当に終わった。別れを切り出したのは私だったが、彼女の「終わりにしたい」という意思を初めて聞くことができた。

悔いは残っている。もっと自分の精神状態が良ければ、とか、もっと彼女に優しくできていれば──そんな想いが今も消えない。でも同時に、私は困難な状況の中でやれる限りのことはやったと思っている。

だから今はただ、彼女が少しでも穏やかに過ごせるように、そして彼女の回復が叶うことを、心から願っている。

「私が離れていっても、絶対に引き止めてね」昔まだ仲が良かった頃、彼女に言われ、約束した。約束を守りきれなくてごめんなさい。

私たちの関係はここで終わったけれど、彼女と過ごした日々は、すでに自分の中で意味を持っている。

感謝の気持ちと彼女との思い出は、心の中にしまっておく。

そして今は、悲しさと虚しさでいっぱいだ。